マーケティング
2021.3.15 (更新日:2022.7.15)
『「鬼滅の刃」「Clubhouse」が流行った理由は行動経済学で分かる』
そう言われたら行動経済学を学びたくなりませんか?
近年、マーケティングにも活用できると注目されている行動経済学。
行動経済学を学べば、
ようになります。
今回は、行動経済学の概要から成功事例などの紹介を通じて行動経済学をご理解いただける内容になっています。ご参考になれば幸いです。
目次
行動経済学とは、
「人間の非論理的な心理作用やそれに基づく判断を活用したアプローチ」
のことです。
経済学においては、人は常に自分の利益を最大化すべく意思決定をするという前提をおいていることがあります。
しかし、人は必ずしも合理的な判断を下すわけではありません。
例えば、楽しそうだからといって値段の高いゲームを買ってしまった経験はありませんか。
ある意味で人間らしいと言える心理学的なアプローチを経済学に加え、人の非合理的な行動を追求し、ひとつの方向を見極めようとするのが行動経済学の基本です。
人は、今すぐ手に入る利益を選ぶ傾向があります。そのため、「当日から使えます」「すぐに使うことができます」などのテキストを広告に付け加えると、CTRが上がります。
LPのCTAボタンに、「今すぐ試してみる」などの文言と一緒に「通常価格○○円→特別価格△△円」といった値下げの表記をしましょう。そうすることにより、はじめに提示した価格と値下げ後の価格の差に魅力を感じ、CTAボタンのCTRが上がります。
人は、損失に対して過大評価し、回避しようとする傾向があります。そのため、「7日間無料」「数量限定販売」など、早めに申し込まなくては損失を被るような表現を加えると、フォーム完了まで実行する確率が上がります。
記事LPのCTA付近で「オンライン限定」「期間限定」というような希少価値を見出すと、ユーザーは今すぐ決断しなければと感じます。結果、記事LPからLPヘの遷移率が上がります。
人は、最初に与えられた情報が強い印象としてインプットされ、その後の行動に影響を及ぼす傾向があります。そのため、ファーストビューに「○○%OFF」「先着○○様限定」など、インパクトのあるフレーズを書くことによって、スクロール率が上がります。
例えば「お試し版」「○○放題」などの表記をして、一回やってみようと思わせ体験してもらいます。すると、ユーザーはその後今までこのサービスにかけた時間がもったいないと思い、サービスの利用を継続をしてCVRが上がります。
最初に関心のないものでも、人気があると知ると興味を示す傾向です。最初に買う気がなくても、みんなが持っていると知った途端、欲しくなってしまった経験はありませんか?人は、無意識に流行に遅れたくないと感じるのです。
現在の欲求を満たすたすことを過剰評価し、逆に将来の損失や利益を過小評価する傾向のことです。
例えば、
1、今1万円もらえます
2、1年後に5万円もらえます
どちらか選んでください。
この場合、多くの人が今もらえる1万円を魅力的に感じます。人は目の前の利益に心が動きやすいのです。
事前に与えられた情報が基準となり、のちの判断に影響を及ぼす傾向のことです。「アンカリング」とは、「船の錨を下ろす」という意味であり、錨が下された地点が後の判断基準となります。
リスクに晒されることや損をすることに過剰に反応してしまう傾向のことです。
例えば、
このゲームに参加しますか?
この場合、多くの人が参加しません。人は無意識に得をすることよりも、損をしないことを選択してしまうのです。
いつでもどこでも手に入るものよりも、なかなか手に入りにくいものを欲しくなる傾向のことです。記事LPで希少性をアピールすることで遷移率をあげることができます。
ここでも、フォーム完了率をあげるケースと同様、アンカリング効果を利用することができます。例えば、ファーストビューに「○○%OFF」「先着○○様限定」などと書き、インパクトを与えることにより、その後の行動に影響を与えることができます。
ハロー効果とは、ある対象の目立つ部分に気を取られ、その他の評価にバイアスがかかり歪んでしまう傾向のことです。
サンクコストとは、今までに費やした労力やお金、時間のことです。サンクコスト効果とは、既に支払ったコストをもったいないと思い、取り戻そうとする傾向のことです。
大流行中のClubhouse。つながった人と音声で通話したり、興味のある人はその会話を聞くことができる音声SNSです。
2021年2月4日時点でユーザー数は50万人ほどだそう。
なぜここまで爆発的にユーザーが増えたのでしょうか?
その理由の1つに「招待制」があります。
Clubhouseは既にアプリのユーザーである人から招待(1ユーザー2人までという制限付き)されないと使用できません。あえて供給量を増やさないシステムになっているのです。
人はすぐに手に入るものよりもなかなか入手することができないものに価値を見出す傾向があります(希少性の法則)。さらに、自分が持っているものに価値を見出す傾向(保有効果)を「希少なもの」と同時に認識させることでこの効果をさらに強めています。
令和初の大ヒット作品「鬼滅の刃」。
「劇場版鬼滅の刃 無限列車編」は千と千尋の神隠しを抜いて歴代興行収入1位となり、多くの人が劇場に足を運んでいます。これほどまでに大ヒットしたことで多くの企業とコラボし、街に出れば鬼滅の刃のグッズやポスターを多くの場所で見かけるようになりました。
また、多くのファンがマスクやキーホルダーといった鬼滅グッズを身に付けるようになりました。その結果、今までに関心がなかった人も人気のある作品であると知り、興味を持つようになりました(バンドワゴン効果)。
今や多くの人が身につけている。Bluetoothイヤホン。うどんが耳から出ているような個性的なデザインが特徴的な商品です。
これは、単に小型化・軽量化を狙ったものではありません。あえて個性的なデザインにすることによって、商品自体が一種の広告塔になり、「多くの人が付けていて気になる」とい思わせます。その結果、最初は賛否両論であったデザインにも関わらず、今や駅や街中で多くの人が身につけているのを目にします。
これは、元々関心がなかったものでも、人気があると知ると興味を持ってしまう傾向(バンドワゴン効果)を利用したものです。
フリーマーケットアプリのメルカリが導入した「メルカリスマート払い」という機能。今月にした買い物の精算を翌月に繰り越すことができます。
精算を後回しにすることにより、購入時のストレスを緩和させ、欲しいものをすぐに手に入れることができると人気です。
これは将来の労力(この場合は精算)を過小評価してしまう傾向(現在志向バイアス)を利用しています。この理論の適用条件としては、「購入時や申し込み時にストレスが生じていること」が挙げられます。購入する段階で、ユーザーが離脱してしまうような面倒ごとがある場合に適応するのが良いでしょう。
おうち時間のお供として大ヒットした「あつまれ どうぶつの森」。ゲーム内では、道を作って整備したり、家具を集めてお気に入りのマイルームを作ることができます。多くの人がゲーム内で自分だけのライフスタイルを作り、SNSでシェアしました。
なぜここまで、たくさんの人があつ森で自分だけの世界を作ることに夢中になるのでしょうか?
そもそも人は、潜在的に自分の個性を自由に表現したいという欲求があります。自分の島や家を好き放題自分好みにすることは、現実の世界では難しいでしょう。そんな夢のような自己表現の世界を提供することによって、商品の魅力度が上がっているのです。
フィットネスアプリ「Finc」は、最初の質問に答えていくだけで1000ポイントもらえる仕組みになっています。ポイントは、アプリ内のショップで1ポイント1円として使うことができます。
最初の質問やチュートリアルが長くてめんどうなフィットネスアプリ。こまめな達成感を
与えることで初期の離脱を回避するシステムです。
これは、目標に向かって進んだと思うと、ゴールに向かっていくモチベーションがあがる傾向(エンダウト・プログレス効果)を利用しています。
ニキビ用スキンケア商品の「プロアクティブ」。
CMではある有名芸能人が、
「世界で一番ニキビを憎んでいた」
「もっと早く使いたかった」
「味わったことのない新感覚」
「とにかく続けて欲しい」
と、プロアクティブを使用してから肌が綺麗になったことを話しています。
人は、開発者でも自分でもない、第三者からおすすめされると説得力が増し、より買いたくなります(ウィンザー効果)。この傾向を利用したマーケティング手法といえるでしょう。
トヨタの「ヤリス クロス」は開発ストーリーの動画がYoutubeにアップされています。動画内では、開発に携わったチーフエンジニアはじめ、開発陣がヤリス クロス開発の裏側のストーリーや熱い想いを語った内容になっています。
商品の説明ではなく、バックグラウンドである開発ストーリーや開発者の熱い想いを消費者に届けることによって、最初の印象とは異なり、魅力的に見えてくる傾向を利用したマーケティングです。
目の洗浄液であるアイボンのCMでは、実際にアイボンを使用し、使用済みの液にたくさんゴミが浮いている映像を流しました。空気中にの菌やホコリが目に入っていることを強調する内容となっています。
このCMを観た人は、「アイボンを使わないと目の中にこん何汚れが溜まっているんだ…。」と思うでしょう。
このCMは、ネガティブな角度から商品を訴求することによって、この商品を使用しないとこんな損失を受ける(損失回避性)と思う傾向を利用したものです。
動画配信サービスの「U-NEXT」は31日間無料でサービスを体験することができます。その後、
「せっかく1週間、時間と労力を費やしたのだからここで解約するのはもったいない。」と思い、課金するユーザーが多くいます。
これは、それまでに費やしたコストをもったいないと思う傾向(サンクコスト効果)を利用しています。
もっと学びたい方のために、行動経済学に関するオススメ書籍をご紹介します!
ホットな話題であるにもかかわらず、なかなか現場に持ち出されない行動経済学を26の実例でわかりやすく学べる本です。現場に落とし込める施策を知れるので、行動経済学を身近に感じることのできる1冊です。
実験を例にわかりやすく行動経済学を説明しています。著者であるダン・アリエリー氏はマーケティングの研究者でもあるので、マーケターにとって実践に落とし込めるヒントがたくさんあると思います。
2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授の代表作です。経済学の本という感じではなく、初心者でも読みやすい内容になっています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「行動経済学って名前だけ聞いたことあるけど何かわからない…。」
「マーケティングで使える具体的な事例が知りたい…。」
と思っていた方もこのブログを読んで行動経済学の概要や実例を知ることができたのではないでしょうか。
読む前よりも行動経済学を身近に感じていただけていたら幸いです。