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2024.11.29 (更新日:2024.11.29)
法律事務所の合併は、成長戦略として有効な手段です。
「法律事務所の合併に必要な費用や手続きについて知りたい」
「法律事務所の合併には、どのようなメリットがあるのだろう?」
合併を検討している法律事務所の経営者や弁護士の方には、このような疑問や不安をもっている方が少なくありません。
法律事務所の合併によって事業規模の拡大や専門性の強化といったメリットがある一方、組織文化の違いによる衝突や経済的負担などのリスクも存在します。
本記事では法律事務所の合併を検討している方に向けて、以下の内容について解説します。
合併の全体像を理解し具体的なイメージを掴むことで、法律事務所の合併を検討している方の参考になれば幸いです。
「合併を考える前に自身の事務所の集客を強化したい」とお考えの方は、以下の記事も合わせて参考にしてください。
2000年代のはじめから、法律事務所の合併数が急速に増加しました。
合併により日本の法律事務所の規模は急速に拡大し、2023年時点で所属弁護士数が100名を超える法律事務所は11にのぼります。
合併によってより専門性の高いリーガルサービスを提供できるようになるだけでなく、経営基盤の強化や国際的ネットワークの構築も可能になります。
法律業界の変化に対応するため、法律事務所の合併は重要な戦略のひとつであるといえるでしょう。
参考:https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/1-4-1.pdf
大手法律事務所の合併や国際化が進む一方、中小規模の法律事務所は経営資源の不足や専門性の確保などの課題を抱えているのが現状です。
2001年頃の司法制度改革により、弁護士数は増加傾向にあります。
弁護士が1人、または2人の小規模事務所が全体の70%を占めており、中小規模の法律事務所の競争が激化しているといえます。
事務所の存続と発展のために、合併は選択肢として有効な手段のひとつです。
参考:https://www.agaroot.jp/shiho/column/number-lawyers/
参考:https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2021/1-4-1.pdf
法律事務所の合併により事業規模の拡大や専門性の強化、コスト削減などさまざまなメリットをもたらす可能性があります。
特に中小規模の事務所にとって、合併は経営基盤の強化や事業継承の有効な手段となり得るのです。
法律事務所の合併による主なメリットは以下のとおりです。
それぞれ解説します。
法律事務所の合併による大きなメリットのひとつは、事業規模を拡大できることです。
弁護士や事務員などスタッフ数が増加することで、より大きな案件に対応しやすくなり収益増加につながります。
また拠点を拡大できる可能性もあり、新たなクライアント獲得が期待できる点もメリットといえるでしょう。
複数の事務所が合併することで、専門性の強化が期待できます。
さまざまな案件に対応できるため、クライアントにとって利便性が高くなり信頼獲得にもつながります。
法律事務所の合併により、事務所の運営コストを削減できる可能性があります。
オフィスの賃料や事務機器などを共有することで経費を抑えられる効果が期待できるでしょう。
中小規模の法律事務所が大手事務所と合併する場合、知名度の向上が期待できます。
事務所の規模が拡大することで、メディアに取り上げられる機会が増えたり大型案件を受注したりする可能性も増えます。
知名度の向上によりクライアントからも注目され、新規クライアントの獲得へとつながる可能性もあるでしょう。
特定の分野に特化した法律事務所の場合、景気動向により業績が左右される可能性があります。
合併により特定の分野への依存度を軽減することで、リスクを分散できます。
高齢化が進む法律業界において事業継承は大きな課題のひとつです。
法律事務所の合併により後継者不足の問題を解消し、事務所の存続につなげられます。
法律事務所の合併は規模の拡大や専門性の強化といったメリットがある一方、リスクも伴います。
合併を考える上でこれらのリスクに対し適切な対策を講じることが必要です。
異なる組織文化をもつ事務所が合併することにより、職員間の衝突が起こる可能性が考えられます。
また評価制度や報酬体系の違いが職員のモチベーションの低下につながることも。
法律事務所の合併を考える際には、双方の事務所の職員の不満が最低限になるよう十分な配慮とシステム構築が必要です。
法律事務所の合併には多額の費用がかかる場合があります。
合併の際に必要な費用として以下があげられます。
合併後の経営が想定通りに進まず収益が減少した場合、経営危機に陥るリスクも考えられます。
法律事務所の合併により既存のクライアントが離れるリスクがあります。
事務所の体制や担当者が変わることで、長年取引をしていたクライアントが不満を感じ他の法律事務所に移ってしまうことも想定されます。
事務所の移転によりアクセスが悪くなり、クライアントが離れることも。
合併する場合は、クライアントへの説明やアフターフォローが重要となるでしょう。
事務所の合併後、事業統合がスムーズに進まないリスクが想定されます。
業務プロセスの統一やシステムの統合に時間がかかり、一時的に業務効率が悪化することも考えられます。
合併前にしっかりと統合計画を策定し、十分なコミュニケーションをとることが必要です。
複数の法律事務所が合併し、成功した3つの事例を紹介します。
合併が成功した要因として、明確な戦略に基づいた合併計画や統合プロセスの課程での綿密なコミュニケーションなどがあげられます。
2020年、弁護士法人キャスト・A.I.Globalグループ、弁護士法人あい湖法律事務所が合併しキャストグローバルグループを設立。
弁護士、公認会計士、税理士をはじめとした専門家が所属し、幅広い法務サービスに対応できる体制を整えました。
国内20拠点だけでなく、国外に8拠点を置く大規模なグループとして活動しています。
参考:https://recruit.forcustomer.com/companyhistory/
2002年、森綜合法律事務所と濱田松本法律事務所が統合し森・濱田松本法律事務所が誕生。
森綜合法律事務所は渉外分野に業務を拡大していたときに、ファイナンス分野で評価の高かった濱田松本法律事務所と合併することで、業務分野を補完・拡充することに成功しました。
さらに2005年にマックス法律事務所と合併。
知的財産権に強いマックス法律事務所が加わることで、さらに高度なサービスを提供できるようになりました。
国内5拠点に加えて、北京やシンガポールなど海外の拠点も増やしています。
参考:https://www.mhmjapan.com/ja/firm/history.html
参考:https://no-limit.careers/guide/782/
2005年、アンダーソン・毛利法律事務所と友常木村法律事務所が合併しアンダーソン・毛利・友常法律事務所が設立。
2015年にはビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所も統合し、所属弁護士数が国内で2番目に多い法律事務所になりました。
国際展開に力を入れておりAsian Legal Business M&A Rankings 2024やIndia Business Law Journal: The International A-List 2024 といった受賞歴もあり、国内だけでなく海外からも高い評価を受けています。
参考:https://www.amt-law.com/news/achievements
法律事務所の合併にかかる費用の一例として、以下のものがあります。
他にも合併により看板や名刺の変更などの雑費も必要です。
事務所の規模により費用は大きく異なるため、法律事務所の合併を検討する際には専門家に相談しましょう。
法律事務所の合併には、さまざまな手続きが必要です。
合併前にデューデリジェンスを実施し、相手の事務所の財務状況や法的リスクを確認することが重要です。
法律事務所の合併は事業規模の拡大や専門性の強化など、さまざまなメリットをもたらす可能性がある一方でリスクも考えられます。
合併を検討する際は、自身の事務所の強みや課題を分析し合併の目的を明確にすることが重要です。
法的手続きや費用負担、合併後の経営について相手側と慎重に話を進めていく必要があります。
合併を進めるためには、多くの手続きと多額の費用が必要です。
「合併を考える前に、今の事務所で集客を強化したい」とお考えの方は、以下の記事も合わせて参考にしてみてください。