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2021.4.28 (更新日:2023.8.16)
昨今の日本は、様々な場所で価値観の変化が求められています。
2020年から流行しているコロナウイルスの影響で、企業の在り方を再認識した経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
企業の在り方を表現する根幹には「ビジョン」が存在します。
さらにそのビジョンが浸透していることで、企業の価値観・文化となり、在り方がつくられていきます。
今回は、ビジョンを再策定した当社やクライアント様の事例、浸透の重要さに加え、そのとき本当に役に立った本をご紹介します。
この記事がお役に立てますと幸いです。
目次
「粋」
これが新しい当社のVISIONです。
(まだブラッシュアップ段階で仮のものとなります)
創業以来『人のこころに眠る「わくわく」を呼び覚ます』という経営理念の下、『人々が「今日も頑張ろう」と思う情報を創る』をビジョンに掲げ、さまざまなクライアントさんのご支援・メディアの運営を行ってきました。
そんな私たちが今回、ビジョンの再策定に至った理由は2点あります。
2021年4月に新卒1期生が入社し、2020年4月と比較すると中途のメンバーも含め30名から50名ほどの組織になりました。併せて新型コロナウイルスの影響により、リモート勤務が増え、メンバー全員が顔を合わせることが難しくなっています。
また、私たちの事業は大きく分けてクライアントワークと自社メディア運営に分かれています。それぞれが自分たちの事業にコミットしているうちに、良くも悪くも部署によりカラーが変わっていました。
上場に向けてこれから急成長を目指している私たちにとって、このような理由でチーム感が薄れてしまう可能性を懸念していました。
創業時の2013年から今日にかけて、世の中は大きく変化しました。
年号は平成から令和に変わり、2020年には安倍政権が幕を閉じました。
2015年には、日本で初めて渋谷区がパートナーシップ制度を施行されたことを始め、さまざまな場面で多様化を受け入れる姿勢が求められました。
私たちWEB業界の視点から見ても、スマホの普及率も50%ほど伸び、人々は情報をより速く集め、またそのデータを活用していくような動きが主流となってきています。
この変わった環境の中で、私たちはどんな未来を実現したいのか(=ビジョン)を再確認していくこととなりました。
そして何度も話し合いを進める中で、今回決まったのが冒頭で紹介したビジョンです。
「粋」を辞書で引くとこのような意味があります。
1 気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること。また、そのさま。「粋な姿」「粋な柄」「粋な店」⇔野暮 (やぼ) 。
2 人情の機微、特に男女関係についてよく理解していること。また、そのさま。「粋な計らい」⇔野暮。
ちなみに、似た言葉で「粋な計らい」がありますが、これにはこのような意味があります。
「気が利いた、人が喜びそうなことをさりげなくすること」という意味で、本人に内緒であれこれと考えておき、当日実行した時や、後になってから本人が気づいて喜んだり感動したりすること。
私たちは古き良き日本の文化を大事にしつつも、多様な価値観が存在する新しい組織を目指しています。
周囲の方に思い遣りを持つことが「粋」であり、そして世の中やクライアント様、ユーザーの人生をよりよくしたいという思いが込められています。
辞書にもあるように、洗練されててお洒落であることも「粋」です。
つまり、私たちは裏では世のため人のために思いやりを持って愚直に一生懸命努力しつつも、表の姿はスマートであることが目指したい姿だと判明しました。
世のため人のために社会課題の解決に貢献し、クライアント様の発展に貢献し、ワクワクを生み出したいと考え、このビジョンに決定しました。
そしてこのビジョンに沿った新しいPRINCIPLESも決定する予定です。
当社では企業の根幹となるビジョン作りのサポートも行っています。
先日お手伝いさせていただいた某プロスポーツクラブでは、10年前に策定されたビジョンを、時代の変化を踏まえて作り直したいというご要望をお持ちでした。
そこで今回は、以下2つのステップで最高のビジョンをつくっていきました。
ビジョンの要素を集めるフェーズです。
企業の歴史や企業の強み・課題、大事にしている価値観や考え方、目指したい未来など、今の自分たちを構成している要素を集めます。
探索ステップで集めた要素を分解し、ビジョンを形にしていきます。
このステップがあることで、全てのステークホルダーの思いがこもったビジョンを作ることができます。
ビジョンは作っただけでは実現しません。
ビジョンを実現するためには、ビジョンが反映した「行動」と強い「企業文化」が必要です。
メンバー全員が同じ思い・目標を持って行動し、その行動が企業を継続的に成長させ、強い企業文化に繋がります。
さらに、そのためには「ビジョンの浸透」が必要です。
ビジョンが浸透した状態とは「社員の行動や言動・意思決定にビジョンが反映されている状態」です。
この状態をつくり出すには、以下のような方法があります。
ビジョンが浸透していない場合、行動や意思決定がメンバー個人に委ねられてしまいます。
そうすると、目指す方向がわからないメンバーの自主性が失われ、同時にモチベーションも下がり、組織が悪循環に陥ってしまいます。
ビジョン策定のお手伝いをさせていただいた某プロスポーツクラブでも、メンバーへのビジョン浸透の重要性が見えてきました。
そのため新しいビジョンの策定後は、以下のような浸透のサポートをご提案しています。
2020年6月にデザイン会社として初めて上場した「株式会社グッドパッチ」は、一度組織崩壊してしまったものの、上場前にバリューの再構築を実践しています。
組織崩壊したときはこのような状態だったそうです。
“- 2016年の年初に行動指針の8way発表。後に浸透失敗。絵に描いた餅に。
– 元からいるメンバーと新しく入ってきたメンバーの対立
– 初めての評価制度導入で納得度が低くメンバーが大反発。大量離職
– 全社員共有のQiitaTeamに経営批判を含めた怪文書が複数回投稿される
– 100人になるまでやっていた毎日の朝礼と毎週のプロジェクト共有会の廃止
– CFOの退任。100人を超えた組織で同時に管理部メンバーがほぼ全員退職。”
株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 土屋尚史氏のnoteより
(カルチャー崩壊と再構築。 Goodpatchが取り組んだ組織デザインの2年間 – 前編)
この状況を打破するために、さまざまな角度からリカバリーを行い、少しずつ改善していく中でバリューの再構築に臨みました。
グッドパッチ社には、
VISION「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」
MISSION「デザインの力を証明する」
というビジョンとミッションがあり、これを実現するために必要だったのがバリューの再構築と浸透でした。
企業の価値観が強固なものになることで、一歩先の未来に向かっていくことができるのです。
代表の土屋氏はバリュー再構築の際、メンバーにこのように伝えています。
100人を越えてから1年半が経過し、人が入ってきては抜けを繰り返しており、100人の組織の壁を未だ脱出できていない。もちろん、1年前に比べて会社の雰囲気は良くはなったと感じてはいるが、ここから更に組織として一つの方向に向かっていくには、カルチャーの明確化が重要だと思っている。今、事業戦略と組織戦略を考えているが、採用戦略、人材育成、離職逓減、色んな施策を打っていくのに、どうしても明確な価値観や文化が必要で、そこがクリティカル・パスになっている。
今のグッドパッチにとって、企業文化の再構築は最重要課題なのである。
ー株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 土屋尚史氏のnoteより
(カルチャー崩壊と再構築。 Goodpatchが取り組んだ組織デザインの2年間 – 後編)
ビジョンを行動に反映し浸透させることは、最高のビジョンをつくること以上に重要なのです。
当社ではリンクアンドモチベーション社のクラウドツールや、全社会議、1on1などを通して、現場メンバーへ代表の思い、WonderSpaceとしてのビジョンや価値観を伝えています。
アップデートしたビジョンの浸透はこのように進めていきます。
実際にビジョンを作りたい、ビジョンを浸透させたいと思っている方にぜひ読んでいただきたい5つの本をご紹介します。
ブランディングのスペシャリストである江上 隆夫氏が著者。
ビジョンの重要性、ビジョンの作り方、浸透の方法などが詳細に書かれています。
「ビジョンの本」といえば文句なしで紹介したい一冊です。
リクルートHCソリューショングループが行った、デンソー社の「デンソースピリット」を浸透させるプロジェクトが記されています。
デンソー社は全世界に拠点を持っており、国によって浸透の方法が全く違うため
「自社にベストな浸透の方法は何か」を考えることができます。
経営コンサルタントであるジェームズ・C・コリンズが著者であり、言わずと知れた理念経営のバイブル本です。
経営者が企業に活力を生み出すのは「カネ」ではなく「理念」ということが書かれています。
「社員の幸福度」にフォーカスをあてた本書。
社員の幸福度が高いほど組織のパフォーマンスが高まり、結果的に会社の業績向上にも繋がっている実態を踏まえ、
働き方改革の本質とは何かが書かれています。
京セラ株式会社の創設者、稲盛和夫氏が著書。
人間としての原理原則を会社の経営方針や判断基準に定め、不可能を可能に変え続けて来ました。
人生哲学から幸福とは何かを学ぶことができる一冊です。
いかがでしたでしょうか。
ビジョン浸透は、会社を成長させるために必要不可欠です。
日本中の企業がビジョン浸透を行い、全員が同じ目的を持って仕事をしている最高の組織が増えることを願っています。